MEDIA keg HD30GB9 (KENWOOD)

 ヘッドフォンステレオは、SONY WMD-DT1を使っていました。ポータブル型のDATプレイヤーで、やや重たいものの、音質はクリアな中に暖かさもあり、いい感じです。
 しかし、ご多忙に漏れず"It's a SONY"な製品。これがないと、殆どの機能が使えないというリモコンが、製造終了後まもなく欠品となるなど、相変わらずの体制です。
 今後のこともあるので、MP3プレイヤーを試してみましたが、やはり、音がもう一つです。そこで、リニアPCMが使える機種を探しました。しかし、形式として一応対応しただけというものが殆どで、容量などの点で、なかなか良いものがありませんでしたが、ロスレス(可逆圧縮)を特徴としているKENWOOD MEDIA keg HD30GB9-Bを選択してみました。
 なお、現在はこれの後継機であるHD60GD9ECを使用しています。専用ソフトバグや、使い込んでみての感想などは、そちらの方にまとめる予定です。

箱を開ける

外箱

 箱は二色刷りの簡素で小さなものです。JASRACの証紙が貼ってあるのは、デモとして曲が1曲収録されているからです。
 JASRAC(日本音楽著作権協会)は、この種のデジタルプレイヤーにも補償金を課そうと目論でおり、プレイヤーどころか、パソコンそのものや、HDDといった部品すら対象にしようと画策しています。このJASRACのクレクレ行動は、留まるところを知りませんが、それについては別の機会に。
 中は、本体と簡単な説明書、USBケーブルが入っています。本体は、ポーチに入っていましたが、大きさも全く合っていない上に、100円ショップでも、もっといいものを売っていると思うようなものなので、おそらくこれを使い続ける人はいないのでは。出荷時は単なる製品保護袋にでも入れた方がいいと思います。
 きちんとした説明書が電子データ化されて製本されていないのは、最近では普通になりましたが、この製品は、専用ソフトのCD-ROMも付いていません。全ては、本体のハードディスクに保存されています。
 なお、ACアダプターは別売りで、充電はUSBケーブルをパソコンにつないで行います。

全体の作り

外観 外観点灯時

 つやつやとした深い黒色は、高級感があります。ピアノのようです。そういえば、ThinkPadで、こういう塗装の物がありました。が、この塗装は指紋付きまくりで、ちょっと気持ち悪いですね。私は、めがね拭きで持ち支えてケースに入れました。
 上半分が画面で、下半分が音量や選択などのキーになっています。キーは、四角い板状。上下左右の縁と中心というワンキーシーソータイプで、縁が青色に綺麗に光ります。
 画面は、SHARPのノートパソコンMURAMASAに似たタイプで、はこりが入るに違いないと思っていたら、案の定、どんどん入っていきます。
 上辺に、電源、USB、イヤホンの接続口が並んでおり、いずれもむき出しでカバーはありません。

充電してみる

電池表示

 まずは、充電しなくてはいけないのですが、ACアダプタが付属しておらず、標準ではUSBを介して充電することになります。私は、ザウルスやW-ZERO3[es]の充電用に、AC電源からUSB充電用に電力を作るアダプタを持っていたので、それを利用して充電しました。ACアダプタを使うより汎用性もあり、価格も安くて小さいので、ACアダプターを買うより、こちらを買う方が良いのではないかとも思います。
 充電中は画面に赤い電池マークがアニメーション表示され、充電が終わると緑色の電池が表示されますが、使わない時も画面が点きっぱなしというのは、精神衛生上よくありません。それに、この電力消費も大きいはずで、充電時は充電に専念して欲しいものです。赤い▼のLEDが付いていますので、充電中は点灯、完了時に消灯でいいと思うのですが。
 鉄道で長時間移動することが多いのですが、そうなると電池が持ちません。そこで、乾電池でUSB端子を使って充電できる道具を買ってみました。電池切れのHD30GB9をつないでみると、充電中の表示となりました。何時間かして電源を入れてみると、あともう少しで満充電という所まで進んだ感じでしたので、朝には充電完了だなと思ってそのまま寝ました。
 朝、HD30GB9を見ると、なんと電池切れでした。満充電直前まで充電したのに電池切れ、これはどういう事なのでしょうか。原因は、HD30GB9の充電表示です。HD30GB9は、充電中と充電完了時には乾電池の絵を表示します。このためにバックライトを点灯させ、液晶画面を駆動するわけですから、かなりの電力を消費します。この時、「USB充電器>充電表示に消費する電力」ならいいのですが、USB充電器の電池が減って、「USB充電器<充電表示に消費する電力」になると、「充電表示のために、内蔵電池を消費する」という、本末転倒な事態になります。やがて、充電表示のために内蔵電池を使い切って電池切れとなるのです。
 充電表示のために大量の電力を消費する設計がおかしいと思うのですが、乾電池式充電器を使うことは想定外でしょうから、あまり責めることもできません。この充電器、分解してみると逆流防止のダイオードが付いているだけなので、相当電池が弱るまで微弱な電流が流れ続け、HD30GB9が充電モードのままになってしまうのが原因のようです。
 そこで、ちょっと高いのですが、定電圧回路の付いたものを買ってみました。これなら、電池の電圧が低くなると出力をカットするので、HD30GB9が充電モードのままにならずにすみます。試しに一晩放置してみた所、ちゃんと充電が完了していました。最初から、ケチらずにこれを買えば良かったですね。
 とはいえ、充電中表示に多くの無駄な電力を使っていることには違いないので、やはり充電中の表示には対策を望みたい所です。

設定してみる

 本体で日付や時刻を設定した後、HD30GB9をパソコンにつなぐと、HD30GB9がストレージで動作するか、プレイヤーとして動作するかの選択になります。これは、充電にUSBを使用するため、充電器代わりの際は、パソコンから切り離すためだと思われます。ストレージを選択すると、大容量外部ストレージとして認識され、内蔵ハードディスクのプログラムを実行するか問い合わせてきます。ここで実行すると、専用ソフトがインストールされます。このインストール動作は、ソフトが入っていないパソコンにつなぐ度に実施されますので、特にインストール本数などの制限はないようです。
 なお、ストレージとして接続すると、デフラグもフォーマットも出来るようになりますが、システム領域が保護されないので、ファイル操作には注意が必要です。フォーマットすると、単なる外付けHDDになってしまいます。そうなった場合は、PC側にバックアップファイルが有りますので、これを転送する必要があります。このバックアップは、専用ソフトのインストール時に作成されますので、買ってきていきなりストレージで接続してフォーマットしてしまうと、メーカーのサイトからリカバリソフトをダウンロードして作業するか、メーカー送りと言う事になってしまいます。

曲の転送

 リッピングした曲の転送は専用ソフトKenwood Media Applicationで行います。WAV形式でリッピングしたファイルは、設定すれば、ケンウッドロスレスという、可逆圧縮で転送されますが、ファイル名が曲名になる以外は、アーティスト名、アルバム名、曲順、画像データなどは、転送ソフトの編集画面で手動にて設定する必要があります。この時、曲順以外は、一括しての設定が可能です。
 なお、この操作をして「OK」を押すと、HD30GB9との通信に非常に時間が掛かりますので、一括でなくとも、「次」ボタンで曲情報編集対象を選択していき、編集したい曲全ての作業が終わった時点で、「OK」ボタンを押して、HD30GB9のデータを更新した方がよいでしょう。
 また、曲を転送していなくとも、何か操作した時は、HD30GB9切り離し前に必ず「更新」をしないと、内容0件のアルバムなどが生成されることがあります。
 HD30GB9に転送される際、パソコン側のディレクトリ構造が、ルートからそのまま反映されます。つまり、転送したい曲が、"\data\My Document\MUSIC\"にあると、HD30GB9のディレクトリ構造も同じに作られます。但し、普段は「アルバム名」や「アーティスト名」で分類されるため、特に意識する必要はありません。また、違うディレクトリに入っていても、アーティスト名などが一致するとまとめられます。逆に、アルバム名やアーティスト名が一致してしまうと、違うものでも同じものと扱われますので、同名のものがあれば、名前付けに工夫が必要になります。

専用ソフト

 専用ソフトKenwood Media Applicationの使い勝手は、非常に悪いです。曲順をドラッグして動かすことも、トラック番号を自動的に振り直すことも出来ません。ファイル単位やアルバム単位での表示は出来ますが、カット&ペーストが出来ないので、アルバム間の移動などは、いちいちアルバム情報を入力し直さなくてはなりません。
 一部に、ファイル名としては使えても、正しく転送出来ない文字があるようです。また、PC側で画像を関連づける際、ちゃんとプレビューも出来て、「次」「戻る」で動かしていても表示されているのに、「OK」で閉じてしまうと、次に呼び出せば関連づけされていないという事があります。この場合は、PD側で関連づけすると、正しく表示されます。
 こんなに使い勝手の悪いというか、単機能なソフトは久しぶりに出会った気がします。曲情報の編集では不具合も多いので、このソフトはロスレス転送用と割り切り、曲情報などはフリーソフトを使った方がいいと思います。

画面表示

画面表示

 割と大型の画面が付いており、転送したジャケットなどが表示されます。ジャケットは、曲単位で設定でます。最大で200×200ですが、アルバム選択時などは小さく表示されます。表示は綺麗で、小さい文字でも読み取れます。ドットは縦長のようですので、PC上では真四角も、やや縦長になります。このあたり、縮小の際にアスペクト比を変更してやる必要があるかも知れませんが、そこまで厳密にすることもないでしょう。200×200以下の画像を転送すると、不足部分は黒く塗られてします。ここは、背景透過という処理が良いですね。これも、ファームの変更で何とかなるのではないでしょうか。
 背景は、3種類から選べますが、自分でカスタマイズすることは出来ません。

操作系

異常表示

 音量キー以外は、全く表示がありませんので、暗記するか、画面に操作ガイドを表示させる必要があります。操作とメニュー形態は、ちょっと分かりづらいです。キーには、「家マーク」「♪」「リターンキーマーク」が表示されるのですが、いわゆる「ホーム」がはっきりしないので、どのキーでどこまで戻るかが、分かりにくいのです。一つ上に戻るかと思ったら、全然違うところの選択になったりしますし、曲の送り戻しも、左右でなく上下、しかも上が戻しの設定になっているなど、直感的な操作に難ありです。
 HDD搭載機ですが、レスポンスそのものは良く、選曲などでイライラを感じることはありません。
 なお、操作中にSYSTEM ERRORと表示して、一切の操作を受け付けなくなりました。原因は不明です。

電池の持ち

 悪いです。ロスレスを使っているということもあるのでしょうが、WMD-DT1だと単三2本で二週間ぐらい再生できたのに、同じ使い方をして三日で電池切れになります。HDDを積んでいるにしても、WMD-DT1は、テープとヘッドを動かしていたわけですから、電池容量が違うにしても、ちょっと短すぎですね。
 再生中は、画面全灯→画面減光→画面切りと▼の点滅の順に時間経過とともに切り替わり、電力を節約します。キーの縁取り照明などは、切りにすることも可能です。

音質

 やや堅い感じです。デジタル機器は、このようなものなのでしょうか。しかし、ロスレスを使用した時の解像度などはさすがです。音が、綺麗に散っていきます。クラシックやジャズなどの、楽器演奏では明らかに差が出ます。
 ただ、まるでヒスノイズのようなものが小さく乗ります。無音→雑音発生→音再生というステップになるのですが、この出所がどこなのか。ソフト的なものであれば、ファームウェアで対策可能かも知れません。このノイズは小さなもので、Form-2を使って外で聴いていれば、まず気になりません。

堅牢性

 壊れました。2006年12月18日に届いて、2007年1月4日に壊れました。通勤時に使用して、年末年始には使っていませんでしたから、10日間くらいで壊れたことになります。
 電源を入れてもすぐ切れたり、勝手に曲が送られたり戻ったりという状態で、なぜか、ヘッドフォンプラグを外すと直ります。どうやら、基板のジャック取り付け部付近にひびが入り、この近くを操作系の回路が走っていて、プラグを差すとその影響で異常動作するようです。
 プラグを抜き差しをしたわけでもないし、無理な力が掛からないよう気をつけてはいましたが、だめだったようです。あまりに早いので、元々製造不良の品物だったのかも知れません。ジャックと言えば、もっとも外的な力の掛かるところ。HD30GB9はどうなっているか分かりませんが、ローランドのR-09は、半田で基板に接続して固定されているだけでした。こういうところは、ジャック部品そのものも固定して欲しいのですが。
 使い物にならないので、2007年1月5日に修理に出すためケンウッドへ。いつ頃戻ってくるかは不明です。戻ってきたら、状況を追記します。
 何と、1月11日に戻ってきました。連休を挟んだので、実質は出した次の営業日には修理が完了しています。早いです。ケンウッドですから、一ヶ月は覚悟したのですが。修理伝票を見ますと、「メインキバンコウカン」とあります。

終わりに

 価格なりに、しっかり応えてくれる機種です。ただ、J-POPだけ聴いているなら、小さくて軽くて安くてソフトも使いやすいiPodあたりで良いでしょう。クラシックやジャズなどを、多少の不便はあっても、外でもある程度の音質を確保して聴きたい人向けだと思います。